見えない何かと戦う者たちへ

「…えっと、なんかごめん」

「えっあっううん、
嬉しかったしあやまらないで…」

「えっあっえ?うれしい?」



美結はびっくりするたび顔が火照っていることに
気づいていた。

手で仰いでいるが
そんなことで冷めるはずがない。


なぜかまるで熱がうつったみたいに
ソノの身体も熱を帯びていた。



確かに夏も近づき最近は暑くなってはきているが
火照るほどではない。

まして汗をかくはずもない。





ソノは
家に帰りたいと思った。


汗で髪の毛が額に引っ付くのだ。

着ているシャツも汗ばんでいる。

まだ1時間目も始まってないのに。




美結はなんだか
今までに感じたことがない気持ちに覆われていた。

親や懍がいつも言ってくれる"かわいい"の言葉。

男の子に言われたのは初めてだったからなのか
ほかに理由があるのか。

ただ
今までと違う嬉しさと恥ずかしが美結を襲っていた。





「えっあっあろ、じゃなくて
えっと…あっそろそろ文化祭だね!」

「えっあぁ、そーだな」

「そのくんはお父さんとかお母さん、
来るの?それともほかに家族とかいるの?」



美結はだいぶ心が落ち着いてきて
平常心になって話のネタを持ち出した。

だが
ソノは違った。





平常心どころか
なんて表現するばいいのだろうか。

強いていうならば、
ぽけ~っとしている。

なにそれ?
というような顔で美結を見つめている。


美結と盗み聞きしていた明日香は
なんだか次にくるソノの言葉が不安に思えた。




その不安はソノの言葉によって
止めを刺された__。



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