見えない何かと戦う者たちへ

いち


文化祭前日。

教室、学校中がバタバタとせわしなく動いていた。




「和呂さーん、こっち手伝って」

「おーい、実行委員!こここんなんでいいか~?」

「みゆう~、さっき先生呼んでたよー」




実行委員の美結はバタバタと音をたてて動き回っていた。

そろそろ
倒れるんじゃないかと思うほど忙しそうだ。

しかも美結は容量の悪い子らしく
余計な動きが多い。

みんなが呼んでいるにも関わらず
聞こえていないのかどうなのかわからないが答えれていない。





「相田!こっちみてくれ」

「相田くん、暗幕もうないって言われたんだけどどーしよー」

「おい、そのどこいったあぁぁぁ」



美結に変わらず劣らず
忙しそうなやつがもう一人いた。



「それに関してはさっきみただろ。
そのとき言ったことができてんならいいよ」

「暗幕は申請書を持ってるクラスはその分ちゃんと取っててくれてるはずだから、このプリント持っててみろ」

「…で?垣内はなんだよ、特に重要ではないだろ」



「そのぉ、俺の扱いだけひどい~」




教室のあちこちから笑い声が上がった。

ほかのクラスは"大変、急がなきゃ"の気持ちばかりで
笑い声が聞こえるクラスなんてほとんどない。

別にソノたちに余裕があるわけではない。





美結はソノの的確な指示に見とれていた。

自分は文化祭実行委員なのに
全然仕事もできていないし、
みんなに手伝ってもらってばかりだ。

自分の不甲斐無さにあきれる。




みかねた明日香が美結に声をかけた。

「もう一人の実行委員より全然いい働きだと思うよ」

そばで作業をしていた懍は
どうなんだその慰めの言葉は…と思いながら美結の顔をチラ見した。

「う~ん(汗)確かに、まさかねぇ…」

と苦笑いだった。





実は
もう一人の文化祭実行委員の男子は
季節はずれのインフルエンザにかかったのだ。


もう新たに実行委員を選ぶような時間はないので、
なんとなくクラス委員長の相田そのが彼の代わりをしている状態なのだ。






「てか、美結
先生に呼ばれてるんじゃなかったっけ?」

「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!忘れてた!ごめん明日香これお願い」




ものすごい悲鳴のような声をあげて
美結が教室を出て行った。

明日香はそんな様子をみてほほ笑んだ。



懍は見逃さなかった。

ソノも穏やかな顔して美結が消えていった方向を見て
ほほ笑んでいたことを。

そして
そんなソノの姿を見かけ、ほほ笑んでいる垣内を
懍は見逃さなかった。





「…うふっ、グフフフ…エヘヘ」


「あすかー、また懍が妄想の暴走はじめたー」

「あーそのへんに投げといて」




また教室に笑い声が響いたことは
いうまでもない。

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