見えない何かと戦う者たちへ
自然と笑みがこぼれた。
わかる、自分でもわかるほど
今懍の表情は崩れているに違いない。
グヘヘヘ…ととんでもなく気持ち悪い声も出している。
その声に引き寄せられたかのように中二病が
近づいてきた。
二人はグヘヘヘ…と合唱し始めた。
「「グヘヘヘヘ…」」
明日香がパコーンといい音をたてて
二人の頭を叩いた。
声も出さずに二人は頭を抱えてうずくまった。
「妄想じゃなくて、文化祭のために頭使って」
「普通そこは口じゃなくて手を動かせっていうとこだろ」
誰が言ったのかはわからないが
また教室に笑い声が広がった。
明日香はソノを見た。
ソノはみんなから少し離れたところで
教室全体を観察していた。
潔癖症とひとくくりにしていいものなのか微妙だが、
まあその障害のせいでみんなの輪に入って作業することができないのだ。
美結は前々から
実行委員でもないのにいっぱい迷惑をかけちゃってると
申し訳なさそうにしていたが、
ソノにとってはかなり有難かったのではないだろうか。
明日香はソノのもとへ近寄った。
「その」
「ん?」
ソノはプリントに書いた計画表と完成した品物リストを照らし合わせて
今の作業状況を確認しながら振り向いた。
「今日の放課後、話があるから残っててくれる?
あっもちろん垣内も、懍は…
そうね、どっちでもいいわっ」
瞳をぎらぎらと光らせた懍が
明らかにしょぼんとした。
なんだか気の毒だと
垣内は思った。
ソノはあぁと言って確認作業に戻ったが
垣内はなかなか動かなかった。
たぶん話っていうのは
この前明日香と美結が言っていたこと
なんだろうけど
垣内はその前にどうしてもソノ本人に確認したいことがあった。
「垣内、どうかした?」
心配した明日香が顔をのぞいた。
いつになく真面目な表情で見つめ返してきた。
「あー、いやあのさぁ…
みんなで話すよりも前に
そのと一対一で話したいことあんだけど、いいか?」