見えない何かと戦う者たちへ

放課後、
さすがに文化祭前日だったので学校には
かなりの人数が残っていた。


ソノはまだ少し仕事が残っていたので
人のいない教室へ帰った。

肝心な垣内は鞄ごと
消えている。




(はっあいつ帰ったのか?)




ため息ついてソノも帰り支度を始めた。
鞄を持って教室を出るときだった。

黒板隅に小さく
だけど妙に大きく見える濃い字で
"屋上!!"と書いてある。



思わず息がフッと出た。




あまり人気のない場所で話したかったので、
垣内はソノを屋上まで連れ出す作戦だった。


垣内は
屋上に着くなりすぐに座り込んだが
ソノはそんなことできない。



「…で、話ってなんだ?」

「…お前、すぐに本題いくの?」




どうやら、
垣内は少し雑談をしてから話したかったようだ。

ソノは垣内の意見を聞いたものの
結局無視して本題を進めるように言った。





「…しょーがねぇから
言ってやるけど…」


垣内はそこで言葉を切った。

座っているのでいつもより余計
小さく見える。











「そのは、好きな奴いんの?」







ソノは大きく目を見開いた。

見開いただけではなく、
何度も何度も瞼を開けたり閉じたりした。


「ななんでお前はっ
懍が言ったことと同じことを…
俺はお前に気なんてないぞ?」

「俺だってねぇよっ!
…そうじゃなくて、ああくそっ!
いんのか?いないのか?答えろよ!」



垣内は立ち上がってソノの胸ぐらを引っ張ろうとして
あきらめた。

潔癖症のやつに
触るのは酷なことだ。



しばらく
屋上は静かだった。

ソノはよく晴れた空をめんどくさそうに
見ていた。





いつもそうだ。

大抵のことはなんだってできるし、
やってしまう。

人と関わると潔癖症が邪魔をしてしまうから、
人とは絡まない。

だからなのか
ソノはこの世の中すべてがめんどくさいと
言わんばかりの顔で今まで生きてきた。

垣内は昔からソノのことを知っているわけではないが、
春頃まではまさしくそれだった。





「…なんで、聞く必要があるんだ?」
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