見えない何かと戦う者たちへ
「保健室いこ!」
「いや、いいよこれくらい」
すぐに階段を下りようとした彼女を
ソノは止めた。
美結は心配そうに振り返り、
下に置いた箱を持ち上げた。
ソノは自分の血のついた右手袋を見た。
今まで学校で手袋を外したことはない。
だがこのときはなぜか
外したのだった。
外そうとする彼に対して
少し驚きながらも止めた方がいいのか悩む美結がいた。
だが
外した手をみてより一層目を丸くした。
ソノの手は
今血が出ているところだではなく
至るところが傷でボロボロだった。
指は長く白くてキレイなはずなのに、
手荒れがあまりにもひどい。
血はぽたぽたと落ちて
まるでほかの傷を隠しているみたいだ。
「…醜い手だろ」
ソノはなぜか、
笑っていた。
その笑いは
自分自身を笑っているようで美結は胸を痛めた。
美結はソノが潔癖症と知ってから
ネットで色々調べていた。
そこには
重度の潔癖症は手の洗いすぎで手荒れがひどいとあった。
たぶん
ソノはそれだ。
一度外した手袋をもう一度つけるか迷ったソノは
血だらけの元は白い手袋を見てまた悲しそうに笑った。
中々笑わない人だから
いつか笑ってくれないかなと思っていた美結だが
こんな悲しい笑顔なら見たくなかったと後悔した。