見えない何かと戦う者たちへ
「わーーー」
パチパチと手を叩いて
美結が喜んだ。
つられて明日香も拍手する。
「えっあっじゃなくて、
ソノ会ってなに!?」
拍手していた両手を見つめ
慌てて両手を下ろす。
垣内はまた咳払いをした。
口を開くのかと思いきや
まさかの画用紙をめくり始めた。
美結は垣内の隣に座っているので
見にくそうだがなんとか覗き込んで見ている。
「第一回目の議題
"相田そのの潔癖症を治そうの会"!」
「えー"会"っておかしいよー
議題なんだから会はいらないよー」
という美結のツッコみにツッコみたいが
明日香はなんとかグッと堪えた。
「で、なんでいきなり潔癖症?
てか別に本人が治したいと思ってないみたいだし
ありがた迷惑なんじゃないの?」
だいぶ空になってきたコップに口をつけた。
美結が飲んでいたメロンソーダも
完全に炭酸が抜けているだろう。
「…うーんまぁそれは」
「お待たせいたしましたぁ
オムライスのお客様ぁ」
「あっ私です」
この店員、
さっきからいいところで邪魔しにくるなとは
口が裂けても言わないと三人は思った。
「で、なんでソノが潔癖症を治したいって
わかるのよ?垣内がソノに聞いたの?
聞けるわけないよね、ヘタレだし」
垣内が
食べようとしていたものを喉に詰まらせた。
美結はコップを両手で持ち
かすかに笑っているのを隠している。
「俺は別にヘタレじゃねえーよ!
…まぁ確かに今日、本人に聞いたわけじゃねぇけど」
なんかブツブツ言っているが
明日香と美結の耳までは届かなかった。
美結は美味しそうにオムライスを
口にした。
ここのファミレスのオムライスは
最近流行りのトロトロ系ではなく昔ながらのオムライスでかなり美結好みなのだ。
ふと、
呟きを止めた垣内に目を向けた美結が
目を丸くし眉をひそめた。
「なんで垣内君鞄が二つあるの?」
明日香も少し腰を浮かせ
二人が座る席を見てみる。
確かに
垣内は左右に鞄を置いている。
美結は垣内がいない方に鞄を置いているので
その席に鞄が三つあることになる。
「あっこれソノのやつだわぁ~
やべぇ…あとで持っていこっ」
「なんであんたが持ってるのよ」
明日香がじとーっとした目で
垣内を見た。
美結も垣内に視線を送った。
「いや、ソノ引っ張るとき
直接身体触ったら嫌がるから鞄引っ張ったら…そのまま」
アハハと垣内は頭をかいた。
明日香はあきれたようにため息をついた。
美結はなぜか安堵している。
「よかったぁ、
垣内君そーゆー趣味なのかと思った」
胸に手を当て満面の笑みで美結が
言った。
「えっそーゆー趣味って…えっ?」
美結の言葉に
垣内と明日香は固まった。