見えない何かと戦う者たちへ
「ねぇ、美結
聞いていいのか迷ってたんだけどやっぱり聞くわ(笑)
…昨日ソノと何があったの?」
ある程度食べ終えた明日香は
ぬるくなったオレンジジュースを一口飲んだ。
垣内は明日香の目の前で
ずっと食べ続けている。
どこから出てきたのか、
いつの間にかいちごジャムのビンがテーブルの上に
あって着々と量が減っている。
「…うーん
端的にいうとね、」
可愛らしくこぶしを額に
コツンとあてた。
どうやら
言葉を選んでいるようだ。
明日香と垣内は、
こんな風に考える人間って
現実にいるんだなと思ったことは口に出さなかった。
垣内はあまりにも美結が
うーんとうなり続けるだけなので
そろそろまた食事に戻ろうかと悩んだ。
「えっとね」
やっと
美結は言葉を選んだらしい。
明日香はほとんどないオレンジジュースを置き、
垣内もまた苺ジャムでベトベトのナイフとフォークを置いた。
「そのくんから手を、伸ばして…」
なぜか
美結の顔が赤くなっている。
余計気になった二人は
ついつい身体を乗り出して次の言葉を待った。
だが
一向に次の言葉がやってこない。
顔を赤らめそれを隠すように
右頬を片手で押さえている。
「…美結?」