見えない何かと戦う者たちへ
翌日の登校時



「その君、おはよっ!」

「…あぁ、はよう」




ソノは早々と靴箱を後にした。

美結とは全く目も合わせずに。

ただ、
恥ずかしい気持ちと
うれしい気持ちが入り混じって
わからなくなって逃げだしただけなのだが。


その行動は美結にとっては不安でしかなく、
「私、なんかしたかなぁ」と
つぶやいたつもりだった。






「どした?
そんな大きな声でため息ついて」

後ろからポニーテールの明日香が
声をかけた。


「…で、一応聞くけど
懍はどうして息が上がってるの?」


あきれた様子で振り返った明日香の後ろに
ゼーハーゼーハーと息が荒い懍の姿があった。




「…ハーハーッ、美結の、ハー、困った顔がハー
 ……かわいいね((グッド!」

懍はよだれをふき取ってグッドと手を前に突き出した。





「相変わらず懍ちゃんは変態だね」

「…美結は相変わらず笑顔で毒舌ね」

「そこもいいよね!あっまたよだれが…」




三人は笑いながら教室に向かった。

靴箱の裏にいた人物に気づくことなく。

彼は美結が来るのをずっと待っていた。といえばまだ聞こえはいいが、ただのストーカーだ






「ん?」

「懍ちゃん?」






急に立ち止まった懍に
明日香と美結は振り返った。






「ちょっと用事思い出した。
さき、教室行ってて」

変態の懍がいつにもまして真剣な顔で
去っていった。






「懍ちゃん、
朝からなんか大変そうだね。
あんな真剣な顔して…なんだろ?」

美結は凛とした背中を見送りながら
明日香にたずねた。


「あ~…
あれはねぇ、えっと、掃除よ掃除」


美結とは違って
殺気だって見える懍の背中を見ながら苦笑した。








< 8 / 84 >

この作品をシェア

pagetop