静かにみちる
家庭環境から素行不良になったのは明白だった。
それを同情する余地はこちらにはない。
憎しみを口にするのは容易いけど、それでは足りないという気持ちもわかる。
だけど、四年だ。
拷問にも近い、恋人を死に追いやった相手と同じ空間で、少女が目覚めるのを待つのは。
本当はわかっていた、いつかはどこかで歪むと。
必ずくる、狂っているのだから。
どんな思いで傍についていたのだろう。
恨みを共有したくても、良治君は当時19歳だった。
兄の死に泣き崩れた。
相手を許さないと式場で咽び泣いていた。
そんな彼の横で、麻奈は多分泣いていなかったと思う。
ちゃんと泣いたのだろうか。
ちゃんと悲しんだのだろうか。
自分の中で、幹斗の死を受け入れられたのだろうか。