ハナノナミダ
「…身を売られる…分際…ですって…?」
この時、私の中の何かにピきっとヒビが入った様な気がした。
自信が無い訳じゃない。
ただ、怖いだけ。
怖い
けど…
「…ふん!やってやろうじゃないの。一生懸命働いて早く借金を返済して、こんなところ出ていってやる!!」
“負けず嫌い”と言われることは昔は何度もあったけれど
今となっては、生きることも面倒くさがってそんな反抗できる気力さえ無かった。
でも、これだけは分かる。
『吉原なんて早く出ていきたい』
私はこれだけの為に働くんだ。
「そうかい。まぁ、せいぜい頑張りな」
それを言い残し、遣り手婆は私の部屋からサッと出ていった。
「…はぁ」
さっきまで感じた緊張感が一気に抜け、つい溜め息を吐く。
「あんなこと言っちゃったけど…稼げなかったらどうしよう。しかも、今夜からだし、…」
またもやはぁ…と溜め息を吐いたその時だった。
部屋の襖が開き、花霧姉さんが部屋に入ってきた。