ハナノナミダ
そのあと、私はひたすら走った。
後ろを振り返らずに
「はっ、はぁっ…」
息が…苦しい。
だが、あの重くて目立つ遊女の着物を着てこなくて良かったと心に思う。
あんなの着て走ったら身が持たないから…。
暗い夜道は怖い。
どこの道を走っているのか分からない。
行く宛もない。
だけど今は、吉原から離れなきゃいけない。
ただ走って走って走りまくって
捕まらないようにしなくちゃいけない。
だが必ずしも身体には、限界と言うものがある。
休まずずっと走り続けた華の身体に、もう限界が来てしまった。
「…っ……はぁ…はっはぁ…」