二回目の恋の始め方


「アイツも大分変わったから会ってあげて」と言われ、引き釣った笑みを浮かべた私

会いたくないと思うのは当時、録な思い出しかないからだ


嫌な事の一つをあげるなら、こんなのがあった


「昨日の夜さ、大きなGが出てきて大変だった!もう家中大騒ぎ!Gって翔ぶんだよ!もう、本当に!思い出してもゾッとする!」


私の家族は誰もがGが苦手だった


絶対殺せないし、騒ぐだけ騒いで大騒ぎしたっけ



結局、お隣さんに殺してもらい助かったけど、飛んで来た時は死ぬかと思ったっけ



で、その事を話してて、次の日...


「これやる」と、奴(太陽)に無理矢理持たされた物は小さな箱だった


嫌な予感しかしない私は「要らない」と押し返したんだった


ムッと顔をしかめて良いから受け取れと言われ、押し問答してたら箱に小さな隙間が出きてしまって、その隙間からGがヒョコと顔を出したんだった


奴(太陽)はあろう事か本物のGを捕まえて嫌がらせをして来たのだ

カサカサと這い出して来たGを目にした私は悲鳴をあげて泡吹いて倒れたんだった



本当に録な思い出が無い。



そんな奴が今から来ると言うんだから勘弁して貰いたかった


露骨に嫌な顔する私に直美は言った


「奴もさ、ユイに謝りたいらしくて...」


成る程、奴も自分が仕出かしてきた事くらい分かってたらしくて、謝りたいと思ってたみたいだ


G事件はまだ軽いモノで奴との思い出はその殆どが録な事が無い


けど、私も成長したし、仕方ないなぁと頷いた


嬉嬉と笑いながら彼氏(太陽)に電話を掛けて呼び出す直美


まぁ、奴との思い出は録な事が無かったけど、直美の彼氏と言う事もあって、私は許す事にしたんだった


その事を後悔する事になるとは少しも分かってなかった



この時に戻れるなら、私は絶対間、間違えないのに


私は間違えてしまったんだ


選択は沢山あった


30分後にインターホンがなった


奴が来たのだ


嬉しそうに玄関に向かう直美



現れたのは凄く背が高くて...昔の面影を残した苦手で嫌いだった太陽と...


「...久し振り」



懐かしい幼馴染の姿だった



チビな私はポカンと見上げるしか出来なかった



そんな私を見ながらクシャリ表情を崩す幼馴染


「ユイ、変わんないな」

凄く背が高くなった二人の男は当たり前の様に直美の部屋へ入ってきた


来なれてるのか直美の横に腰をおろして話始める太陽と幼馴染の姿をマジマジと観察する私



こうやって見ると少しだけ面影を残した容姿にジンワリと懐かしさが甦る


しかし、成長とはこんなにも人を変えるのか、苦手だったがき大将のアイツは少しだけチャラくなってた


真っ黒だった短い髪は襟足まで延びており、少し染めてるのか茶色かった。お洒落な今時の若者で浅黒い肌と数種類のピアス


何時も意地悪そうな顔して突っ掛かってた容姿は、確かにこんな顔だったけど、私の知ってるガキ大将はこんなに笑う奴じゃ無かった


アーモンド型の目許と長い睫、キリリと整った男らしい眉毛。程好い筋肉質な身体。


私の第一印象は


コイツ、こんなにイケメンだったか?だった

そしてチャラいだった



嫌いだったし思い出が録な事しか無かった私は目に入れるのも嫌だったから奴の顔立をあまり覚えていない


そんなガキ大将がクルリと此方を向く


「...ユイ」


そしてキリリと顔を整えあろう事か名前を呼ぶ

「こら、太陽!苗字‼」

直美に叱れシュンと落ち込む太陽は昔からは考えられない位変わっているらしい

そう言えば昔から偉そうに名前で呼んでたっけコイツと、しれっと冷めた目線で見つめる私

昔のコイツだったら絶対死んでも謝らないだろうと思われたが


「...ああ、ごめん、昔の癖で...」


謝った事に目を丸くする

それほど奴は変わったのだ


コレはアイツなのか?あの偉そうで傲慢で自分本意な奴なのか?私は夢でも見てる?と頬をつねる

気持ちは良くわかるけど本物だと幼馴染に諭される

ヘニャリ眉を下げた奴はコホンと咳払いし土下座する勢いで頭を下げだした



「今更だけど謝らせて下さい。昔、いっぱい、いっぱい...意地悪...えっと、苛めてごめんなさい!
今村ユイさん‼殴るなり蹴るなりして良いので許して下さい」


ああ、どれ程の事をして来たのか事細かく言いたいけれど、時間が無いから改めて書くとして、土下座する程、奴は酷かったと思って貰いたい


土下座でもまだ緩い!と思う事を知って貰いたい


された方は、ずっと忘れないものだ



しかし私も成長した


「じゃ、遠慮なく」


と、思いっきりバシッと奴の頬をひっぱたいてやった

昔は何も出来なかったかもしれないけど私も成長したんだとわからせたかった



頬に真っ赤な掌の後を残した奴はポカンと私を見つめた


まさか本当に殴られるとは思って無かった様で間抜けな顔を晒す


しかしポカンとしたのは奴だけじゃなかった


直美も幼馴染もポカンとしたのを私は知ってる


しかし「プッ...」吹き出した直美の笑い声に空気が変わる


「手形残ってる。でも、これで許してくれんだから良かったじゃん」


ケラケラ笑い太陽の頬を指さす直美と、少し不貞腐れた太陽


「...自業自得」


だと言って笑う幼馴染を見ながら緩く目を細める私


色素の薄い茶髪と切れ長の涼しげな目許は少しも染めておらず地毛だと知ってる


外人だと良く馬鹿にされていた幼馴染はかっこ良く変わってた

モデルの様なスラリとした体格。その風貌は綺麗でとても眼を引く

少し大人になった幼馴染は確かに魅力的に見えた


しかし、まだ、恋も初めっておらず、懐かしさに胸が踊った私は幼馴染に向き直る


「そう言えばおばさん元気?」


おばさんに良く似た容姿の幼馴染を見ながら思い出したのは幼馴染の母親の事だった


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