二回目の恋の始め方
それから、休みの日を使って定期的に四人で会う様になっていた
直美に「ねぇ、もしかして私達お邪魔虫じゃない?」と聞いてみたりしたけど
「ん、良いの良いの‼何だかんだ4人で居るの楽しいし?勉強捗るし?」と返ってくる
私が来る事によって恋人との時間が減ってるのでは無いかと心配したけど、余計な心配だったみたいだ
次の休みの日に私は悩み事を打ち明けた
「生理がね...来ないんだ」
「...」
聞いて欲しい事があると神妙な顔する私を見ながら姿勢を正した直美が私の第一声に真っ青になる
「あのね...その...他の人には言えないし...どうしたら良いのか悩んじゃって」
他人からしたら悩むまでも無い事なのかも知れないけど、私からしたら大きな問題なのだ
モジモジと恥ずかしそうに俯く私の言葉を最後まで静かに聞いてた直美は真剣な眼差しを向けて呟いた
「おばさんには言ったの?」
「え......まだだけど...言わなくても気付いてるんじゃゃ無いかな?」
お母さんの事だから何に悩んでるのか気付いてるだろう
「それはそうか、大事な娘の身体の事だもんね」
ハァーと息を吐き出し「で?」と聞いてくるから「え?」と答える
「で、どうするの?」と私以上に切羽詰まった顔するからポカンとしながら「どうするも...こうするも...どうも出来ない」と呟いた
悩み事を言ったのは聞いて欲しかったから
聞いて貰って大丈夫だと言って貰いたかったから
初潮は遅かれ早かれ絶対に来ると言って欲しかったから
話を聞いて貰いスッキリしたかっただけ
まさかこんな事になるなんて...誰が想像出来るだろう
私の言い方が悪かったと思う
初潮って言えば良かったのに
私の言い方をそのまま捉えると
生理が来ないんだ=赤ちゃん出来たかも!と捉えた直美は一ミリも悪くない
だから
「私一人じゃ手に負えない」
って真剣な顔するからポカンと見てた私は次の瞬間、度肝を抜かされる事になる
素早い動作で電話を掛けて直美は言った
「良い?私達が絶対に強力するし、見捨てないから!だから男の意見も取り入れよう?ね?相手の男にはまだ言って無いんでしょ?妊娠したって」
「は?」
「太陽?今すぐ来て!ユイが一大事...良い?よく聞いて落ち着いて...ユイが妊娠したらしいの......って太陽?...切りやがった」
一瞬何を言ったのか分からなかった私だけど、次の瞬間直美が誤解してる事に気付いて直ぐに修正する
「違っ!直美っ!妊娠じゃないっ!」
慌てて修正するも、時すでに遅くて
バタバタバタと階段を上がってくる足音が響き渡る
どうやら太陽と奏は近くに居たらしくて数分も掛からずの登場だった
直美の親は両方とも共働きで昼間は居ない。けれど直美の家にお邪魔する時は幾ら親しくてもインターホンは鳴らすし、お邪魔しますって礼儀はちゃんとしてたのに
今回よっぽど慌ててた様で汗だくになりながら二人の男が部屋に雪崩れ込んできた
その表情はどちらも切羽詰まったモノで私は居たたまれなさに胸が縮み上がった
二人とも切羽詰まった表情しながらも瞳をギラギラと輝かせ引き釣った顔する私に詰め寄った
「「何処の野郎だ?」」
その後、私はひたすら謝った
恥ずかしい思いもした
言葉は慎重に選ばなければイケないと学んだ
私の妊娠が誤解だと分かり安堵する二人
「す、すみませんです...」
顔を真っ赤にしながら謝る私が居た
何が悲しくて自分の初潮の話をしないとイケない?
恥ずかしくて死ぬかと思いました。
「まぁ、でも...良かったわ...私の誤解で...じゃないと相手の男を半殺しする所だったし?」
ケラケラ笑う直美の横で奏が「もし本当だったら半殺しだけじゃ済まさねぇけど」ってボソリ呟いた
拳を握りしめた太陽には気付かなかった
勉強会は確実に身を結び、学力が延びて居た私はソレまでの志望校を大幅に変更した
その高校は丁度三人の家から同じ距離の学校だった
私の家から少しだけ距離が開くも、その時の私は高校入ってからも三人と友達付き合いするつもりだったし、行けるなら少しでも就職に有利になる高校に行っておこうと簡単に考えてた
父も母も私がソレで良いなら良い様にしなさいと後押ししてくれた
その頃の私は自分の事で必死で少しも周りが見えていなかった
仲の良いラブラブな直美と太陽を見ながら吠える
「くぅーリア充め!爆発して吹っ飛べ‼」と
「独り身な私達に向けての当て付けか」なんて良く漏らしては意気込んで「高校行ったら彼氏つくるんだ‼」と言ってはケラケラ笑ってたんだ
奏に「好きな奴居ないの?」って聞かれたから「居ないし高校行くまで作らないって呟いておいた
基本、直美の家で毎週末勉強する事が決まってた私達
後からお菓子持参でやって来る奏と太陽が来るまでが女同士の秘密の時間だった
奏と太陽の前では話せない事なんかを話すのが密かな楽しみでもあった