Another moonlight
素直になれない嘘つきな二人
翌日。
アキラはユキのマンションのすぐ近所に配達に来ていた。
何軒かの家に配達を済ませ、配送車に戻ってリストを見ると次の配達先はユキと同じマンションの1階に住む住人宅だった。
(ユキのマンションか…。なんとなく気が重い…。)
アキラはそんなことを思いながら、ほんの少し先にあるユキのマンションへ配送車を走らせた。
あの日からもうずいぶん経つが、ユキには一度も会っていない。
トモキに言われた言葉が、夕べから何度もアキラの頭の中を駆け巡っている。
“なんもしないで悔やむよりは、今どうしたいのかアキが思うように動いてみたらどうだ?なんか変わるかも知んねぇぞ?”
(どうしたいのかって言われてもな…。)
本当はユキのそばにいたい。
できるなら友達としてではなく、一人の男として好きになって欲しい。
けれどそれは、自分だけが思っても仕方のないことだ。
ユキの気持ちはユキにしかわからない。
そしてカンナとのことをどうすればいいのか。
ユキをあきらめきれないままで、カンナを本気で好きになれるはずがない。
だけどあんなに想ってくれているカンナに別れ話を切り出すのは簡単なことじゃない。
(カンナには悪いけど…やっぱオレはユキじゃなきゃダメなんだよな…。)