Another moonlight
ほどなくしてパトカーがマンションの前に停まり、3人の警官が駆け付けた頃には、マンションの住人が何人か心配そうな顔をして、遠巻きにその様子を眺めていた。

二人の警官が男の身柄を確保し、一人がアキラに簡単な事情聴取をした。

アキラは警官に名前や犯人を捕らえた時の状況などを聞かれ、ユキには自分の名前は言わないで欲しいと頼んでから、ユキが盗撮写真や手紙、執拗な電話に悩まされていたことを話した。

「真山さんはこちらの住人の雪渡 愛弓さんとはお知り合いですか?」

「まぁ…。ストーカーみたいなやつがいて困ってるって相談もされてたんで…。」

「あの男に見覚えはありますか?」

「全然ないっすね。配達に来たら偶然変なやつがいたんで様子見たら、妙なことを口走りながらポストに写真放り込んでたんで、こいつかと思って…。とりあえず…オレ、仕事中なんすよね。急ぐんで、もう行ってもいいっすか?」

「通報とストーカー逮捕にご協力ありがとうございました。お仕事中にすみません。」

また何か聞きたいことがあったら連絡すると警官に言われ、アキラは連絡先を教えてその場を後にした。

ストーカーが捕まったことは、警察からユキに連絡がいくだろう。

これでユキに平穏な生活が戻るのならそれでいいとアキラは思う。

(ユキはきっとオレの顔なんか見たくもねぇだろうし…ユキがまた安心して暮らせるなら、それでいいや。)



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