Another moonlight
仕事の後、ユキは菓子折りを持って大家さんの家を訪ねた。

「大変だったわねぇ。ストーカーに狙われてたんですって?」

「はい、まぁ…。」

大家さんは世話好きで少々おしゃべりなおばさんで、マンションの1階に住んでいる。

「あの…大家さんは警察が来た時、見てたんですか?」

「見てたわよ。ちょうど宅配便の荷物が届いてすぐ後だから…2時頃かしら。」

大家さんは時計の方をチラッと見て答えた。

「なんだか騒がしいと思って上がってみたら、荷物を届けてくれた宅配便のお兄さんが犯人を取り押さえててね。そのまま警察に引き渡したのよ。カッコ良かったわぁ。」

「宅配便のお兄さん…?」

(もしかして…。)

不審者を見ただけでストーカーだとわかるような宅配便のお兄さんなんて、思い当たるのは一人しかいない。

「あの…その宅配便のお兄さんの名前、わかります?伝票に配達者の名前書いてますよね?お礼がしたいんですけど…。」

「伝票ね、あるわよ。」

大家さんは一度部屋に入り、宅配便の伝票を持って戻ってきた。

「ここに書いてあるわ。サトミ宅配便の…真山さんって方ね。」

ユキは大家さんから受け取った伝票に書かれた、少しクセのあるアキラの文字を眺めた。

(やっぱりアキだ…。こんな大事なこと、なんで隠すんだよ、バカ…。)



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