Another moonlight
アキラは立ち上がり、上着のポケットから取り出したスマホの画面を見てうろたえた。

(ゆっ…ユキ…?!なんで…?)

慌てて電話に出ようとしたが、カンナの目の前でユキと話すのは気が引ける。

なかなか電話に出ようとしないアキラを、カンナが不思議そうに見ている。

「電話、出ないの?」

「ああ…。会社のやつだ。どうせ、ここの居酒屋にいるから来ないかとか、そんな電話だろ。ほっときゃそのうち切れる。」

そう言うと、スマホの着信音が途切れた。

アキラはスマホをサイレントマナーモードにして、また上着のポケットに戻した。

「またポケットにしまっちゃうの?」

「また掛かってくると面倒だからいい。」

自分でもよくわからないことを言っているなと思いながら、アキラはドキドキしているのがバレないように、なに食わぬ顔で元の場所に座った。

その後もアキラはカンナの前でスマホを見ることはせず、ユキの用は一体なんだったのかと気にしながら食事を済ませた。

今日はとてもじゃないけど、カンナを抱く気分じゃない。

「明日の仕事、早いんだ。だから今日は早く寝たいんだけど。」

「そう?じゃあ…片付け済んだら帰るね。」

「…悪い。」

アキラはとにかく早く一人になりたくて、カンナに嘘をついた。

ユキからの電話を同僚からだと嘘をつき、カンナに早く帰って欲しくて更に嘘をついた罪悪感で、アキラの胸がチクチクと痛む。

(どんだけ嘘つくんだ、オレは…。)



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