Another moonlight
お互いになんの約束もせず恋人と認識しているなんて、よく考えたらおかしな話だ。
いや、もしかしたら恋人だと思っているのは自分だけかも知れないと思いながら、アキラはタバコに火をつけた。
「それじゃあ他の男に乗り換えるって言われても文句言えねぇなぁ。」
「まぁ…そうだな。でもカンナがそうしたいなら、オレは引き留めるつもりはねぇ。」
「なんで?好きじゃないのか?」
流れていくタバコの煙を目で追いながら、アキラは少し考える。
「好きか嫌いかで言うと、多分好きなんだとは思うけどな。でもなんちゅうか…一生一緒にいたいかって聞かれると、正直わかんねぇんだよ。カンナがオレと結婚して幸せかどうかもわかんねぇしな。」
「先のことなんか誰にもわかんねぇよ。オレは一生添い遂げるつもりで一緒になったけど、たった4年で離婚した。」
「若い頃なら勢いだけで結婚できたかも知んねぇけどさ。この歳になるといろいろ難しいもんだな…。」
とは言え結婚を急ぐつもりもないし、身の回りのことは自分でできるから、一生今のまま独身でも特に困らない。
ただ、それではこの先の人生が寂しすぎるような気もする。
「オレは彼女がどう思ってるのかが気になるよ。アキがプロポーズしてくれんの待ってたりしたら、かわいそうじゃん?いい機会だからハッキリさせたらどうだ?」
「それもどうだかな…。」
もし結婚するなら、一生一緒に生きていきたいと思える相手がいい。
だけどそれがカンナなのかと聞かれたら、今のままではきっとうなずけないと思う。
この調子では当分結婚なんてできなさそうだ。