Another moonlight
一緒にいる時は優しいけれど、付き合い始めて半年ほど経った今も、タカヒコのことはよく知らないし、ユキもまた本当の自分を出せてはいないと思う。

なかなか会えない上に彼は電話やメールなど連絡もあまりマメではないらしく、あえてお互いのことを知ったり、愛情を深めたりはしていない気がする。

ユキ自身、本当にタカヒコのことが好きなのかもよくわからなくて、このまま付き合っていてもいいのかと時々思うこともある。

年齢的にもそろそろ結婚を考えなくもないが、サロンもようやく軌道に乗って仕事は楽しいし、この調子では結婚などまだまだできそうにない。

(最近会ったのはいつだったかな…。)

ユキは帰り支度をしながらぼんやりと考える。

確か、先月はタカヒコが買い付けのためにしばらく海外に行くと言って、かれこれもう1ヶ月は会っていない。

帰国したと連絡はあったものの、それからまた忙しいようでここ1週間ほど連絡はない。

頼りたい時や甘えたい時も自分からは何も言えず、いつも受け身になっているとユキは気付く。

(こんなんで付き合ってる意味あるのか?…ってか…これって付き合ってるって言うのかな…?)

ユキは小さくため息をついて、バッグを手に立ち上がった。


恋愛はいつもうまくいかない。

もうずいぶん昔の話だが、ユキにはとても好きな人がいた。

友達同士で遠慮なく言いたいことを言って、いつも自然と笑顔でいられた。

けれど、彼を好きだと自覚してからは、好きになるほどその関係を壊すのが怖くて何も言えず、友達の顔で笑ってそばにいることを選んだ。

あの頃、彼と付き合おうと思えば付き合えたのだと思う。

だけど他の女の子のように、愛情もなく体を重ねるだけで、引き留められもせず捨てられるのはイヤだった。

だからあえて、彼とそんな関係になることだけは避けようと思った。

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