Another moonlight
「私、警察嫌い。」

「なんで?」

「ろくな思い出ないから。」

ユキと警察の間に何があったのだろう?

今までユキ本人の口からも、付き合いの長いアキラたちからも聞いたことがない。

「昔、警察絡みでなんかイヤなことでもあった?」

「うん。」

マナブはレーズンチョコを盛った小皿をユキの前に置いて笑った。

「ホレ、未来の旦那に話してみ。」

マナブから小皿を受け取って、ユキはレーズンチョコを口に運ぶ。

「未来の旦那って…。」

「いいじゃん。もう詐欺男と結婚する気はねぇだろ?」

「それはそうだけど…まぁいいか…。人に話すのはマナが初めてなんだけどさ。」

ユキがそう言って顔を上げると、マナブは胸を押さえて嬉しそうに笑った。

「その、オレが初めてって響きいいなぁ!今、キュンときた!キスしていい?」

「とりあえず…1発殴るか?オイ…。」

ユキは低く呟いて、ヤンキー時代を彷彿とさせる鋭い眼光でマナブをにらみつけ、指の関節をバキバキ鳴らした。

「ごめんって!ふざけずにちゃんと聞くから!!」

「まったくこのエロ魔人は…。」

ブツブツ言いながらタバコに火をつけ、ユキはゆっくりと苦い過去を話し始めた。

「私が高校行ってたの、マナは知ってる?」

「うん、聞いたことある。」

「1年の途中で辞めたんだけどね。」

「らしいね。」

ユキが高校を中退した理由は、アキラもトモキも知らないと言っていた。

「その頃になんかあった?」

「うん…。」


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