Another moonlight
「店出ようとした時に、出入り口にいた子達。警報が鳴ったから咄嗟に私の鞄に押し込んで逃げたんだってさ。私の鞄、携帯出した時に開けたまんまだったから。私がその子達を追い越して店を出た直後に警報がなったんだけど、ビックリして運悪く立ち止まった私が濡れ衣を着せられたと。」

ユキは苦々しい顔をしてタバコに口をつけた。

「店員が警察呼んでさ。なんにもしてないのに警察に連れてかれて。やってないっていくら言っても、信じてくんないの。見た目がアレだし、ブツは出てきちゃってるし、そんなはずはない、オマエが取ったんだろうって。いかにも万引きしそうに見えたってことだよね。」

それから警察がユキの親に電話をしようとしたのだが、元々父親はいないし、その時ユキの母親は過労から来る病気で入院していた。

母親に心配をかけたくなかったユキは、母親には連絡しないで欲しいと言った。

「母親は仕事しすぎて過労で体壊したんだけど、こんな娘のせいで心労で倒れたんじゃないかとか、お巡りが言ってんのが聞こえてさ。さすがに腹立って、殴ってやろうかと思った。」

すると学校に連絡が行き、教頭が対応した。

「学校は学校で、生徒が学校の外でしたことの責任は親にあるから、今回の件は学校には関係ないって。最初から私がやったことになってんの。」

ユキは忌々しげにそう言って、タバコの火を灰皿の上でギュッと潰すようにもみ消した。

「じゃあ…身元引き受け人は誰が?」

「店出る前にたまたまルリカさんと話してたじゃん?電話越しにずっと騒動を聞いてたらしくて。でもその頃ルリカさんはまだ未成年だったからさ。皐月さん…リュウとルリカさんのお母さんなんだけど、ルリカさんとリュウと一緒に警察に乗り込んできた。」

「すげぇな、宮原親子…。」

「うちの母親、皐月さんと仲いいの。それで自分の入院中は私のこと頼むって言ってたらしい。皐月さんとルリカさんが、ユキは絶対にやってないって言ってくれてね、すごく嬉しかった。それでリュウが、防犯カメラは調べたのかって言ってくれて…その結果私の濡れ衣は晴れたわけ。」
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