Another moonlight
「知らない。マナがわからないのに、私にわかるわけないよ。」

もうどれくらいアキラと会っていないだろう?

アキラと知り合って以来、こんなに会わないのは初めてかも知れない。

「そういやストーカーは?もう解決した?」

マナブに尋ねられ、ユキは少し首をかしげた。

「あれから警察からの連絡はないよ。なんとなく視線感じる時は今もまだあるけど…手紙とか電話とかはなくなった。過敏になって見られてる気がするだけなのかな?」

「捕まったやつとは別のストーカーがいる可能性が高いんだろ?用心するに越したことねぇよ。なんかあったらすぐ言って。未来の旦那が急いで駆け付けるから。」

マナブはカウンターの中から手を伸ばして、笑いながらユキの頭をポンポンと優しく叩いた。

「遠い未来の旦那ね。ありがと。」

(なんかあったらすぐ言えって…アキもそんなこと言ってくれたっけ…。もう言えないけど…。)

ユキはアキラの笑顔を思い出し、息苦しさを感じてため息をついた。

「ところで…問題の詐欺男はどうする?他にも被害にあってる人がいるかもだし、やっぱ警察につき出すか?」

「うーん…。」

ユキは頬杖をついて小さくうなった。

「また信じてもらえなかったらって思うと、警察に行く気にはなれないんだよね。」

「この間は信じてくれたんだろ?」

「そうだけど…あれはアキが現行犯で取り押さえてくれたからかも知んないし…。」

他にも同じような被害にあっている人がいるかもというマナブの言葉はよくわかる。

しかし昔のことを考えると、ユキはどうしても警察への不信感が拭えない。

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