Another moonlight
マナブは眉間にシワを寄せて考え込んでいるユキの頭をそっと撫でた。

「一人で不安ならオレがついてくから。それならいいか?」

「……考えとく。」

「大丈夫だから、そんな不安そうな顔すんな。念のため八代さんにもちょっと話聞いてみる。早いとこ手を打たないとな。」

そう言ってマナブは、新しいグラスにビールを注ぎ、ユキに手渡した。

「ホラ、おごってやるから元気出せ。」

「ありがと。」

「な、オレめっちゃ優しいだろ?」

「はいはい。優しいね、マナは。」

ユキは笑いながら冷たいビールを喉に流し込んだ。

マナブは他の客の注文を受けてカクテルを作り始めた。

出来上がったカクテルを客のテーブルに運んで戻ってくると、マナブはカウンターの中で小さく声をあげた。

「どうしたの、マナ?」

「そうだ。もうひとつ肝心なこと忘れてた。」

「肝心なことって?」

「いや…ちょっとな。常連客と八代さんから聞いた話、思い出したんだけど…もうちょっとハッキリしたことがわかったら話す。」

「ふーん…?」

マナブが口をつぐんだのがなぜなのかはわからないけれど、いい加減なことは言えないと言うことなのだろう。

それが一体なんの話なのかは気になったものの、ユキはあえて何も聞かなかった。



その後、マナブはユキを自宅まで送り届けた。

今の段階では“もしかしたら”としか言えないが、いつ何が起こるかわからない。

アキラがユキのそばにいない今、自分がユキを守らなければとマナブは思った。



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