Another moonlight
危険な再会
仕事を終えたアキラは“これから会社の同僚と飲みに行く”とカンナにメールを送った。
何時に帰ってくるのかとか、今日は会えないのかなどと聞かれるかと思っていたのに、カンナからの返信は“わかった”と一言だけ、拍子抜けするほどあっさりしていた。
マナブに言われた通り、アキラは自宅には戻らずマナブのバーへ直接足を運んだ。
まだ時間が早いので開店前だったが、マナブはアキラにビールを出して話を聞いた。
アキラは相変わらず虚ろな目をして、ポツリポツリとこれまでの経緯を話した。
マナブはカンナの異常な行動に悪寒を感じながら、黙ってアキラの話に耳を傾けた。
カンナをそこまで思い詰めさせてしまった責任を感じ、ユキのことは忘れてカンナを大事にしようと思ったけれど、カンナの束縛と執着心で日増しに息苦しくなったとアキラは言った。
けれど一緒にいると約束した手前カンナを見捨てるわけにもいかず、このまま一緒にいることに慣れてしまうしかないとも言った。
「そんなんでアキは幸せか?」
マナブが尋ねると、アキラは少しの間、両手で顔を覆った。
「オレには幸せの意味がわかんねぇよ。どんだけ一緒にいたって、ユキは一生オレのもんになんかならねぇ。これ以上そんなしんどい思いするより、ユキのことは忘れてオレを一生懸命想ってくれるカンナを好きになった方が幸せなんじゃないかって思ったんだ。」