Another moonlight
「込み入った話なら、オレは帰ろうか?」

アキラがイスから立ち上がろうとすると、マナブが首を横に振った。

「いや、ここにいてくれ。アキにも関係あることだから。」

「えっ、オレ…?」

(オレにも関係あるヤバイ話って…一体なんだ…?)




その頃。

ユキはサロンのカウンターの中でパソコンに向かっていた。

エプロンのポケットの中でスマホが震えているのに気付き、ユキはスマホを手に取った。

(タカヒコさんからか…。)

タカヒコから、仕事が終わったら会えないかとメールが届いている。

マナブは警察に行こうと何度も言ってくれたけど、ユキはやはり気が進まない。

それに今のところまだ、実際に被害を受けたわけではないけれど、結婚をチラつかせれば簡単に落ちるバカな女だと、カモにされていたことは悔しい。

だからユキは、自分の力でタカヒコと決着をつけることにした。

元々、たいした恋愛感情なんてなかった相手だ。

別れることになったところで痛くもかゆくもない。

むしろ厄介払いができて清々するだろう。

ユキはこの間のバーで会おうと返信して、スマホをポケットにしまった。

「ん…?」

なんとなく視線を感じて、ドアの向こうを見た。

しかしサロン前の通りに特別変わった様子はなさそうだ。

(…やっぱり気のせいかな?)



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