Another moonlight
思っていることを顔には出さないようにしながら、ユキはパンフレットをめくった。

「アユミのウエディングドレス姿は絶対見たいからさ。どんなのが好き?アユミはスタイルいいから、ミニのドレスなんかも似合いそう。」

こんなのはお金を騙し取るための嘘だとわかっているのに、詐欺なんかじゃなくて本当に結婚できたら幸せになれたのかなとユキは思う。

(ウエディングドレスかぁ…。私には一生縁がないものなのかも…。)

相手は誰でもいいと言うわけでもないが、できることならいつかは愛する人の隣で真っ白なドレスを着て、永遠の愛を誓えたらと思う。

結婚に対してそんな甘い夢を見るのは、いい歳をして乙女みたいで恥ずかしいとも思う。

けれど、変わることのない深い愛と、一生壊れない確かな絆が欲しい。

それがユキの本音だ。


“ずっとオマエが好きだったよ”


ユキはパンフレットをめくりながら、アキラの言葉を不意に思い出した。

(なんで急にアキのこと思い出すかな…。“好きだった”って思いきり過去形だし、アキはカンナと結婚するんだってば…。)

どんなに好きでも叶わない恋もあるし、変わらない気持ちなんてないのかも知れない。

(アキとの友情も壊れちゃったし……一生壊れない確かな絆って…なんだろう?)

ユキは胸の痛みと息苦しさを覚えて、大きなため息をついた。

「アユミ、ため息なんかついてどうしたの?早くもマリッジブルー?」

タカヒコは優しく笑いながらユキの頭を撫でた。

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