Another moonlight
傷付けた罪
遠くから次第にサイレンの音が近付いてきて、救急車とパトカーがバーの前に停車した。
救急隊と警官が店内に駆け込んで来ると、何が起こったのかと店の周りに人だかりができはじめた。
八代はタカヒコが逃げられないように行く手を阻んだ。
カンナは女性警官に身柄を拘束され、何度もアキラの方を振り返りながらパトカーに向かった。
アキラは救急隊の手で担架に乗せられ、いくつかの問い掛けに対して、つらそうに答える。
マナブは、その光景を前に呆然と立ちすくむユキの肩を叩いた。
「ユキちゃん…一緒に行ってアキについててやって。警察の現場聴取が終わったら、オレもすぐに行くから…。」
ユキは小さくうなずき、アキラに付き添って救急車に乗り込んだ。
救急隊が止血をしながら脈拍や血圧を計り、搬送先を確認してから救急車は動き出した。
想像していた以上に揺れる救急車の中で、アキラは目を閉じて時折つらそうに顔を歪めている。
「アキ…痛い…?」
「ん…まぁな…。」
アキラはうっすらと目を開けてユキを見た。
ユキはうつむいてアキラの服の裾を握る。
「なんで助けてくれたの…?私とはもう…友達やめたんでしょ…?」
「ああ…やめたよ……。」
アキラはそう呟いて、また目を閉じた。
(やめたよ…友達はな…。)