Another moonlight
「うーん…そんな親切な人はいないんじゃない?」

「付き合ってる男、いるんじゃねえの?」

「いるっちゃいるけどね。住んでるとこ、少し遠いし。忙しい人だから、そんなこと気軽に頼めないよ。」

「なんだそれ。つまんねぇ関係だな。」

アキラは少し呆れたように呟いてから、ばつが悪そうにグラスのビールを煽った。

(つまんねぇ関係って…オレもユキのことは言えねぇか…。)


とりあえず何かが起きるとは限らないが、ユキの彼氏がすぐに駆け付けられないのなら、自分は近くにいることだし少し気を付けてやった方がいいなとアキラは思う。

「まぁあれだ…。どうしようもない時は連絡しろよ。迎えに行くくらいはしてやるから。」

「ん?優しいじゃん。どうしたの、急に?」

ユキが少し茶化すように笑ってそう言うと、アキラは眉間にシワを寄せてため息をついた。

「うるせぇな。やっぱやめた。」

「ウソウソ、ありがとね。もしもの時は頼むわ。」

「最初っから素直にそう言え、バーカ。ビールの1杯くらいはおごれよ。」

「報酬たかるなよ!」

マナブはカウンターの中から、相変わらず憎まれ口を叩きながらも仲の良い二人の様子を見て笑っている。

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