Another moonlight
「オレが送ってあげてもいいんだけど?」

マナブの一言にアキラは眉をピクリと動かしてユキを見た。

「だってよ。マナに試される覚悟があんならそれでもいいぞ、ユキ。」

「いや、相手が誰でも試される気はないから。」

ユキが少し急いでジントニックを飲み干すと、マナブはおかしそうに笑った。

「オレ、そんな鬼畜じゃねぇし!かなり紳士よ?試してみる?」

「コイツ…やっぱ試す気か…。」

アキラはカウンターの中に向かって手を伸ばし、握り拳でマナブのこめかみをグリグリやった。

「ウソウソ、冗談だって!!アキに殺されたくねぇもん!!」

マナブが堪らず声を上げると、アキラは呆れながら手を離した。

「殺しゃしねぇよ。半殺しだ。」

本気とも冗談とも取れないアキラの言葉に、マナブはまた大笑いした。

「こえーよアキ!!でもなんで?やっぱユキちゃん大事だから?」

「そりゃ友達だしな。お互い同意の上ならなんも言うつもりはねぇけど。」

いつになく真剣な様子のアキラに、ユキは意外そうな顔をした。

「あのさぁ…私を無視して勝手に話進めないでくれる?オヤジかっての。」

「オヤジってなぁ…。オレはユキが顔のいい軽い男に騙されねぇように心配してやってんだよ。」

「顔のいい男はいいとして、軽いってのはひどいけどな。いやがってる女の子に無理やりそんなことするほどオレは飢えてないから心配すんな、アキ。」

「だったらそのニヤけた顔をなんとかしろよ。とりあえず帰るわ。」




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