Another moonlight
ユキは、さっきから急に黙り込んでしまったアキラを不思議に思いながら歩いている。

「急に黙っちゃって…どうかした?」

「ああ…いや、なんでもねぇ。」

「ふーん?ならいいんだけど。」

ユキの横顔をチラリと窺ったアキラは、首の後ろを押さえてため息をついた。

(散々他の女とも付き合っといて“ホントはずっと好きだった”とか今更言えねぇもんな…。)

ユキへの想いを封印したのは、もう随分昔の話だ。

中学生の頃、誰に付き合おうと言われても“好きな人がいる”と言って断るユキに、ひそかに片想いしていた。

ふられるのは目に見えていたので、アキラはその想いを誰にも、もちろんユキ本人にも打ち明けたことはない。

ただそばにいて笑っていられたらいいと、友達の顔をしてユキへの恋心を封印した。

それからもう20年もの年月が流れた。

ユキのことは友達として大事にしようと思いながらも、よく考えたら今まで誰とも本気の恋愛などしたことがないとアキラは気付いた。

(今更何考えてんだ…。オレらはこのままでいるのがいいに決まってんのに…。)

男と女の友情なんて有り得ないと誰かに言われるたび、そんなことはないと否定しつつも、なぜか心のどこかで後ろめたさを感じていた。

その理由はこれだったのかと、アキラは思わず右手で目元を覆った。

(だっせぇ…。オレ、全然割り切れてねぇじゃん…。)

だけどやっぱり、こんな気持ちは今更過ぎるとアキラは思う。

ユキだって自分のことは友達以上に思ってなどいないのだから。




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