Another moonlight
どんな理由で



ユキのマンションが近付いてくると、アキラは急に落ち着かないそぶりを見せ始めた。

「ん?どうかした?」

「いや…。」

(なんだこれ?!今までだって何度もお互いの部屋で二人きりで酒飲んでたじゃねぇか!!)

今更男女の仲になるなんて有り得ないと頭では思っているのに、突如溢れかえったユキへの恋心がアキラを戸惑わせた。

どういうわけか、いやに鼓動が速い。

(いや、やっぱこれまずいだろ…。)

何がまずいのか自分でもよくわからないが、とにかく今はユキと部屋で二人きりになるのは避けたいとアキラは思う。

そんなアキラの思いも露知らず、ユキはドアの前に立って鍵を開けた。

「なぁ、ユキ…。」

「ん?」

ドアを開け、ユキはいつものようにドアポストを開いた。

「やっぱオレ…。」

今日はこれで帰るとアキラが言おうとした時、バサッと音をたててドアポストの中から何かがこぼれ落ちた。

「えっ…何これ…?!」

その異様な光景に、ユキは呆然と立ちすくんでいる。

アキラは慌てて玄関の明かりをつけた。

「なんだこれ…写真?」

足元にはユキの写真が散らばっている。

朝の通勤する姿やサロンに着いて鍵を開けている姿、コンビニで買い物をしている姿など、外で撮られたものの他に、休みの日にベランダで洗濯物を干している姿や、部屋の中にいるユキをカーテンの隙間から撮ったものもある。

「え…なんで…?!誰が…?いつの間にこんな…。」

ユキは玄関にしゃがみこんで1枚の写真を手に取った。

その手が小さく震えていることにアキラは気付く。

どうやらユキ本人も気付かないうちに盗撮されたものらしい。

(ストーカーってやつか?もしかして無言電話も…?)

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