Another moonlight
少しくらい疑わしいことがあった程度では、警察が動いてくれないことくらいはアキラも知っている。

だけど黙って見過ごしてユキにもしものことがあったらと思うと気が気でない。

早めに手を打った方が良さそうだ。

アキラは拾い上げた写真を見て、少し考える。

誰が何のためにこんなことをしたのかはわからないが、ユキが四六時中誰かに見られているのは確かだ。

自宅を知られている以上、ここでユキを一人にして危険にさらすわけにはいかない。

「ユキ、とりあえずうちに来い。」

「でも…。」

「オレんちの方がここよりは安全だろ。後のことはそれから考えればいい。ほら、何日分か荷物まとめろ。」

「…うん。」

ユキはうなずいて、部屋に入りクローゼットの扉を開けて着替えを用意し始めた。


ユキが化粧品や着替えなどをバッグに詰め終わると、二人でアキラのマンションに向かった。

元々は二人とも実家で暮らしていたが、ユキは2年前、母親が再婚するのを機に実家を出た。

アキラも5年前に兄が結婚して両親と実家で同居することになったのを機に、実家を出て一人暮らしを始めた。

二人とも実家を出ても生まれ育ったこの街に愛着があるので、自然と実家からそう遠くない場所に部屋を借りた。

若いうちにいきなり海外に行ってしまったリュウトとトモキの二人とはえらい違いだとアキラは思う。

一体どうしてこの街にいることにこんなに固執しているのか、自分でもよくわからない。

(あー…アイツらと違って、オレは夢をあきらめたからなのかもな…。)



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