Another moonlight
アキラはマンションに着くと、とりあえず不審な者はいないか辺りを見回した。

念のため、部屋に入って異常はないか確認したが、特に変わったところはなさそうだ。

「うちは大丈夫そうだな。」

「うん。」

アキラはとりあえず気を紛らすために冷蔵庫からビールを2本取り出して、1本をユキに差し出した。

「ほれ。飲み足りなかったんだろ?」

「んー、ああ、そうだね。」

棚の中から適当につまみを取り出してテーブルに広げ、二人でビールを飲んだ。

(なんかよくわからん事態になったけど…今はユキを守ることが先決だ。)

間違ってもおかしな気は起こさないでいようとアキラは自分を戒める。

「とりあえずな…しばらくはここにいろ。明日からオレが送り迎えする。勝手に動くなよ。あと、なんかあったらすぐオレに言え。」

「そう言われても…それじゃアキに迷惑掛けすぎだと思うんだけど。」

もしストーカーにこの場所を突き止められたとしても、返り討ちにしてやるくらいの自信はある。

だてにヤンキーだったわけじゃない。

「大丈夫だ。つまらん心配すんな。」

アキラはいつものように笑ってユキの頭をグシャグシャと撫で回した。

いつもと同じことをしたはずなのに少し照れ臭く、どことなくぎこちなさを感じた。

「それより…このこと、彼氏には言っとかなくていいのか?」

「うん…。どうせ連絡もないからしばらくは会う予定もないし…。会いに来るって言ったらうちに戻れば…。」

ユキには彼氏がいるとわかっているつもりだが、アキラはユキの言葉を聞きながらなんとなくムッとした。

(なんだこのムカッて…オレはバカか?!そもそも、オレとユキは友達なんだぞ?)

ユキの彼氏にヤキモチを妬くなんて、自分にもカンナがいるわけだし、よく考えたらおかしな話だ。

アキラはもうこんなバカらしいことを考えるのはよそうとビールを煽った。

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