Another moonlight
浴室からシャワーの音が聞こえ始めた。

ユキは一人でビールを飲みながら、ぼんやりと考える。

(私も似たようなもんだな…。アキに偉そうなことは言えない…。)

タカヒコからは付き合おうと言われたし、好きだとも言ってくれる。

けれど、自分はタカヒコに対して好きだと言ったことなど1度もない。

あまり会えなくてもたいして寂しいとは思わないし、片想いの恋をしていた昔のように、タカヒコを想って胸を痛めることもない。

(付き合おうって言われたからなんとなく付き合ってたけど…私、タカヒコさんのこと好きじゃないのかな…。)




浴室では、アキラが目を閉じて頭から強めのシャワーを浴びていた。

(好きだから一緒にいるんでしょ?って…。)

好きだから一緒にいたくて、好きだと言えなかった。

友達でも一緒にいられたらいいと思っていた。

だけど結局、友達は友達でしかない。

どんなに好きでも、どれだけ一緒にいても、いつかは他の誰かのものになってしまう。

若かったあの頃は、そんなことに気付かなかった。

大人になっても、すぐ近くにユキがいることに安心して、ずっとこのままでいられると勘違いしていたかも知れない。

こんなことならもっと早く告白しておけば良かったのかとか、いっそのことキッパリふられて、この気持ちにも友達と言う関係にもけりをつければいいのかとも考える。

だけどやっぱり、もう一緒にはいられなくなるのかも知れないと思うと、踏ん切りがつかない。

好きだから友達のふりをしてでも一緒にいたい。

好きだから他の誰かのものになって欲しくない。

あきらめようと閉じ込めたはずの想いが、大人になった分だけ形を変えて、またアキラの胸をしめつけた。

(友達なんて…もしユキが誰かと結婚したら、もう今みたいに一緒にはいられねぇんだな…。)





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