Another moonlight
サロンからの帰り道で夕食を済ませた後、二人でアキラの家まで歩いた。

どことなく元気のないユキの様子が気になりはしたものの、アキラは何も聞かなかった。

家に帰りシャワーを終えたアキラは、冷蔵庫からビールを２本取り出してユキの向かいに座りビールを差し出した。

ユキは受け取ったビールを飲みながら、ぼんやりとスマホを眺めている。

「シャワー使っていいぞ。」

「うん。」

ユキはスマホの画面を見たまま顔を上げずに返事をした。

「彼氏か？」

「あー、うん…。来週会えるかって。」

「そうか。」

彼氏からのメールにしては、ユキは浮かない表情をしている。

アキラはどうかしたのかと聞こうとしてやめた。

ユキと彼氏の問題に踏み込むなんてバカなことはやめておいた方がいいに決まっている。

それよりもまずは自分のことをどうにかした方が良さそうだ。

「あ、さっきアキのスマホ鳴ってたよ。」

「ん？ああ。」

アキラはスマホを手に取り、受信したメールを開いた。

（カンナか…。）


“明日会える？”


カンナからのたった一言の簡潔なメールを読んで、アキラは小さくため息をついた。

そういえばいつも、会おうと言うのはカンナからだ。

自分からデートに誘ったり、会いに行ったりしたことはなかった気がする。

（オレ全然カンナに優しくねぇ…。もしカンナがオレを彼氏だと思ってんなら、もっと大事にしてやんねぇとかわいそうだよな…。）

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