Another moonlight
アキラは灰皿の上でタバコの火を揉み消して立ち上がり、キッチンで料理をしているカンナに後ろから近付いた。

(ん…?ネイル?)

カンナはいつもそんなことしていただろうかとアキラは考える。

おそらくカンナがネイルをしているのを見るのは初めてだ。

「カンナがネイルなんて珍しいな。」

「あっ…うん。いいネイルサロンがあるって友達に誘われてね、初めて行ってみたの。どうかな?似合う?」

カンナは料理をする手を止め、指をそろえてアキラに見せた。

ユキがいつもしているような派手なものばかりでもないんだなとアキラは思う。

(あんな派手なのは、カンナがしても似合わねぇんだろうな…。ユキだから似合うのか…。)

「あんま派手じゃねぇし、落ち着いた感じでいいと思うぞ。オレには女のオシャレのことはよくわかんねぇけどな。」

「アキくん、派手なのは好きじゃないの?」

好きじゃないのかと尋ねられ、アキラは少し考える。

元ヤンだけに、昔から周りには派手でけばけばしいファッションの女の子ばかりだったから、かなり食傷気味だった。

だからタイプの違うカンナと一緒にいるのが落ち着いたのかも知れない。

「うーん…まぁ…どっちかと言うとな。本人が満足してりゃそれでいいんだろうけど、あんまりゴテゴテしたのは見てるだけで胸焼けしそうだ。」

「これくらいならイヤじゃない?」

「そうだな。似合ってるし、カンナが気に入ってんならそれが一番じゃね?」

アキラが頭を撫でると、カンナはまた嬉しそうに笑ってアキラを見上げた。

「ん?どうした?」

「アキくん、今日はなんだかいつもより優しいから嬉しくて…。」

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