Another moonlight
二人の活躍を見るのは嬉しい。

それなのにアキラは、歳を重ねるごとに自分と二人との距離を感じずにはいられず、最近では二人がやけに遠く、寂しく感じてしまう。

20年前は同じ中学に通って、15年前は同じバンドで一緒にバカばかりやっていたのに、10年前にはロンドンと日本でまったく違う人生を送っていた。

(いつの間にこんなに差がついちまったんだろうなぁ…。)

アキラはひとつため息をついて、次の届け先のネイルサロンのすぐそばに停車した。

車を降りて荷物を取り出し、伝票の宛名や配達番号を確かめる。

`ネイルサロン Snow crystal´

間違えるわけがない。

このネイルサロンのオーナーも中学時代の同級生で、ヤンキー仲間の一人だ。

アキラは荷物を手にサロンに足を踏み入れた。

こぢんまりしたサロンの待合室には客の姿はなく、カウンターの中ではオーナーの女性がパソコンを見ながら座っている。

雪渡 愛弓(ユキワタリ アユミ)、34歳、独身。

仲間内では“ユキ”と呼ばれている。

小学校時代、同じクラスに“アユミ”と言う名前の女子が3人もいて、それぞれ名字で呼び合うことになったのだが、“ユキワタリ”と言う長い名字が面倒だと言う理由で、リュウトが“ユキ”と呼び出したのがきっかけだった。

ユキは高校を1年の途中で中退し、通信でネイリストになるための勉強をして、技能検定試験合格後にはリュウトの母親の皐月(サツキ)が経営している美容室の客を相手にネイリストとして活動し始めた。

それからコツコツ頑張って顧客を増やし、資金を貯めて、5年前に一念発起してこのネイルサロンをオープンした。


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