Another moonlight
何か特別なことをしたわけでもないのに、ほんの些細なことでとても嬉しそうにしているカンナを見ると、アキラは少しの罪悪感を覚えた。

「オレいつもそんなに冷たかったか?」

「冷たいって言うか…。アキくん、会いたいとか言ってくれないし、いつも私には関心なさそうだから…あまり好かれてないんだなって。」

確かに付き合おうとも言わなかったし、カンナのことをものすごく好きだとか、深く知りたいとも思わなかった。

カンナがそんなふうに思っていたことにも気付かなかったし、それはもしかしたら、自分が見ようとしていなかったから気付かなかっただけなのかも知れない。

いつものように浅くて適当な付き合いをしてきたことが、知らないうちにカンナを傷付けていたのかも知れないと思うと、アキラはいたたまれない気持ちになる。


“彼女をもっと大事にしてあげなよ”


ユキの言葉が不意にアキラの脳裏をよぎった。

そばにいるために友達でいることを選び、告白もせずユキへの気持ちを封印した、ずっと昔のことを今更悔やんでも仕方がない。

ユキにも彼氏がいるのだし、何よりそんな気持ちを今更打ち明けられてもユキを困らせるだけだろう。

それより、今の自分を好きでいてくれるカンナを大事にした方がいいに決まっている。



アキラはカンナをそっと抱き寄せて、優しく頭を撫でた。

「そっか、そんなつもりはなかったんだけどな。優しくすんのとか、あんま慣れてねぇんだ。どう接していいかよくわかんねぇし。カンナはどうして欲しい?」

< 40 / 220 >

この作品をシェア

pagetop