Another moonlight
ユキがマナブからおかわりを受け取ろうとすると、その後ろからアキラが手を伸ばしてグラスを取り上げた。

「オイ、オレの席でクダまいてんじゃねぇ。」

「いいじゃん…私もリュウと話したかったんだよ。ってか私の酒、返せ。」

いつもよりずいぶん飲むペースが早く、既に酔っている様子のユキを見て、アキラは眉をひそめた。

そしてマナブに水を頼んでそれを受け取ると、水の入ったグラスをユキに差し出した。

「飲むならもっとゆっくり飲めよ。とりあえずホラ、水飲め。」

「うるせぇな…小姑かっての…。」

ユキは差し出されたグラスを受け取り、渋々水を飲んだ。

アキラはユキの席に座り、ユキの横顔を窺った。

(なんか荒れてんな…ユキのやつ…。)

アキラは、電話を終えて席に戻った時にユキが結婚の話をしていたことに動揺していた。

それを悟られないように平静を装ってみたものの、やはり内心穏やかではない。

「なぁユキ…今の話、マジか?」

「何が?」

「…結婚するとか…。」

「あー…うん、言われたよ。サロンのこともあるしどうしようかなーって思ってたけど、18も歳下のハルに先越されんのもシャクだし、やっぱ思いきって結婚するか!」

「えっ?なんだそれ!!」

(そんなつまんねぇ理由かよ!)

うろたえるアキラの様子を気にも留めず、ユキはまた豪快にジントニックを煽る。

「そうしよ…。悩んでもどうしようもないこと悩んでるのもバカみたいだし…。なんか吹っ切れたわ。」

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