Another moonlight
片想いの二人



アキラはユキを背負って夜道を歩いていた。

ここ数日の寝不足と心労のせいか、これまでにないほど早く酔いが回ったユキは、アキラの背中で小さく寝息をたてている。

ユキとは中学時代から20年以上もずっとそばにいるけれど、こんなことは初めてだとアキラは思う。

じゃれて小突き合ったり頭を撫で回したりすることはあっても、こんなにユキの肌が密着したことはなかった。

子供じゃあるまいしこれくらいのことで…とは思うものの、いつもは感じることのないユキの女性らしい柔らかさや、意外と軽くて華奢な体つきにドキドキしている。

(柔けぇし…なんかいい匂いするし…。)

背中にユキの体温を感じながら、アキラは夜空に浮かぶ月を見上げて苦笑いを浮かべた。

今夜は満月。

ずっとユキのそばにいるために友達でいることを選んだ自分は、月を見ても狼になることは許されない。

(人の気も知らねぇで無防備だな…。オレじゃなかったら残さず食われてんぞ…。)



ユキの部屋の前まで戻って声を掛けても、ユキは小さな声をあげただけで目を覚まさなかった。

アキラは仕方なくユキのバッグの中から部屋の鍵を見つけ出し、玄関のドアを開けた。

部屋の明かりをつけ、ユキをベッドの上にそっと降ろすと、アキラはその無防備な寝顔を見て、照れ臭そうに頬をかいた。

(気持ち良さそうに寝やがって…。イタズラされても起きねぇんじゃねぇのか?)

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