Another moonlight
一緒にいたいと思われていることは嬉しい気もしたけれど、コツコツ頑張って開いたサロンを手放すのは気が進まない。

タカヒコから、店の切り盛りをミナに任せて新しいネイリストを雇い、ユキはオーナーとして経営だけすればいいとも言われた。

ずっと大事にしてきた地元の顧客を人任せにして、新店舗を持とうとは素直に思えず、ハッキリと返事ができないままでいる。

結婚したいと思えるほどタカヒコのことが好きかは自分でもわからないけれど、このままではどんどん周りに取り残されていくような気がした。

(トモとアユも結婚するし、リュウはハルと結婚かぁ…。タカヒコさんは優しいし、結婚したら私も幸せになれるかな?)




その頃。

アキラは配達の合間に、スマホの着信ランプに気付いた。

(ん?トモか…珍しいな。)

手が空いたら電話してくれと言うトモキからのメッセージを確認して、電話を掛けた。

「アキ、今日晩飯でも一緒にどう?」

「いいけど…二人でか?珍しいな。」

「いや、アユちゃんがユキのネイルサロンに行くって言ってるんだ。その後、オレとアユちゃんとユキとアキ、4人でどうかなって。」

ユキの名前が出た途端、アキラは顔をしかめた。

あの夜、ユキがリュウトを好きだったことに腹を立てて、勝手に告白して一方的に友達をやめると吐き捨てた。

その上無理やりキスなんかしたのだから、ユキとは顔を合わせづらい。

(嫉妬なんかしてみっともねぇ…。あんなのただの八つ当たりだろ…。)

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