Another moonlight
「……悪い、やっぱ今日はやめとく。」

「なんで?」

「ちょっと無理っぽい。」

「だからなんで?」

アキラとユキの間にあったことなど何も知らないトモキは、不思議そうに尋ねる。

「……ユキとはもう会わねぇ。」

「だからそれはなんでって聞いてんじゃん。」

「なんでも。」

「フラれた?」

アキラは何も知らないはずのトモキの口から出た言葉にうろたえる。

「えっ?!なんでそれを…?」

アキラが思わず尋ねると、トモキは大笑いした。

(しまった…!カマ掛けられたのか!)

「トモ…ずいぶんいい性格になったな。」

「悪かったよ。とりあえずオレとアキ、二人で会うか。仕事何時に終わる?」

アキラの仕事が終わってから会う約束をして、トモキは何事もなかったように笑って電話を切った。




夜7時。

トモキとアユミがサロンを訪れた。

「じゃあ、また後で。」

アユミがネイルをしてもらっている間、トモキはどこかで時間を潰すらしい。

トモキは楽しそうに笑ってサロンを後にした。


ユキはアユミをブースへ案内して、ネイルのサンプルを見せた。

「あんまり派手じゃないのがいいんだけど…。」

「ああそっか。アユ、先生だもんね。じゃあ…この辺なんかどうかな?」

「あっ、綺麗な色!これがいい!」

アユミは大人の働く女性に人気の、シンプルで落ち着いたデザインを選んだ。

職業柄なのか、それとも子供がいるからなのか、アユミは同じ歳なのに自分よりずいぶん落ち着いているなとユキは思う。

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