Another moonlight
ユキはハンドマッサージをしながらアユミに話し掛けた。

「聞いたよ。トモと結婚するんだって?」

「うん。子供が中学に入学するから、タイミング的にちょうどいいんじゃないかって。」

2年前の梅雨にショッピングモールで偶然出会った時、アユミはトモキにそっくりな男の子を連れていた。

「前にモールで会った男の子だよね?」

「うん。うちの子、正起(マサキ)って言うんだけどね…生まれた時からお父さんはいないんだよってずっと言ってたのに、マサキはいつの間にかトモくんが父親だって気付いてたみたい。やっと一緒に暮らせる!って、すごく喜んでるよ。」

「そうかぁ…アユはすっかりお母さんなんだねぇ…。私とはえらい違いだわ。」

アユミは幸せそうな顔をしている。

ユキはふと疑問を抱いた。

別れてから10年以上も経ってから結婚しようと思うほどお互いに好きなのに、なぜ二人は別れたのか。

やはりトモキがロンドンに行ったのが原因だったのだろうか?

13年前、ユキがアユミと会った時、アユミは体調をくずして大学を休学中で、一度母親の元に帰ると言っていた。

その11年後にモールで偶然会った時、アユミはマサキを連れていて、あの時休学していたのはおそらく妊娠していたからだとユキは思ったのだが、トモキはアユミが妊娠したことも出産したことも、最近になって知ったと言っていた。

(あれ?アユが妊娠したのはトモがロンドンに行く前だったはず…。もしその時二人が別れた後だったとしても、普通は妊娠したら知らせるくらいはするよね?なんでアユはトモに知らせなかったんだろう?)

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