Another moonlight
「トモくんと付き合いだしてすぐに初恋の人と偶然再会してね。たまに食事したりしてたんだけど…。トモくんとの関係にちょっと悩んでた時、その人に好きだって言われて…1度だけ関係を持った。イヤなら本気で拒めって言われたし、拒もうと思えば拒めたのに、私にはそれができなかった。」

「…なんで?」

「トモくんのことは好きだったけど、このままでいいのかなって迷ってたから。それに…その時の私は、トモくんと正反対の性格の彼に少し惹かれてたと思う。」

「正反対だったの?どんな人?」

「大人にはなったけど優しいところは昔と同じだった。私は中学から遠くの全寮制の私学に行ったから、好きだって言わないまま会えなくなってあきらめたんだけどね。」

ユキはアユミの話を聞きながら首をかしげた。

(あれ?中学行く前に好きだったってことは小学校の同級生?大学生の時に再会して時々食事したりして…?)

アユミの話を頭の中でまとめると、ユキの脳裏に一人の人物が浮かび上がった。

小学校時代の同級生で、アユミが大学生の時に再会して、時々食事をしたりするくらいの関係だった、トモキとはタイプの違う男。

「……それって…リュウ?」

「…うん。宮原くんが私の初恋の人。」

「そうだったんだ…。」

いつも一緒に遊んでいたけれど、まさかアユミがリュウトのことを好きだったとは。

よく考えたらヤンチャな子供たちの中に一人だけ、真面目で大人しい優等生のアユミがいたことは不自然だったのかも知れないが、そんなことにはまったく気付かなかった。

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