Another moonlight
「子供の頃は毎日一緒に遊んでるだけで満足だったけど…会えなくなってから、せめて好きだって言えば良かったって後悔した。私の中では初恋が終わってなかったから、大人になって宮原くんに会った時、勘違いしたんだと思う。」

「そっか。昔、リュウもアユのこと好きだったんだよ。卒業する前に告白すれば良かったね。」

「両想いでも卒業したら会えなくなって終わっただろうけどね。」

アユミは穏やかに微笑んだ。

(アユもリュウが好きだったとは意外…。ひそかに両想いだったのか…。)

ユキはアユミの爪にネイルカラーを丁寧に塗りながら微かに苦笑いを浮かべた。

(リュウはロンドンに行く前もアユのこと好きだったんだよね…。アユと言いハルと言い、リュウはかわいい子がタイプなのかな?私のことは一度も女として見てくれたことなんかないんだろうな…。)

叶わない初恋をいつまでも引きずったままで大人になってしまった。

想い出にすることも終わらせることもできず、伝えられなかった想いをどんどんこじらせて、初恋の人が自分以外の人と幸せになるのを遠くで眺めているしかできない。

こんなふうに想われたら厄介だと自分でも思う。

「ユキちゃんも…宮原くんが好きだったよね?」

「えっ?!」

誰にも話したことはないはずなのに、なぜアユミが知っているのかとユキは激しくうろたえた。

「昔の話だよ。」

「あ…うん、子供の頃ね。」

(焦った…。今でも好きとか言えない…。)

小学生の頃の話だとわかると、ユキはホッと胸を撫で下ろした。

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