Another moonlight
アキラはためらいがちに、これまでのユキとのことを話した。

ユキを失うのが怖くて、ずっと友達でいようとしたこと。

そうして他の誰かと付き合っても、うまくいかなかったこと。

ユキも同じようにリュウトへの想いを隠していたと知ってしまったこと。

そんなユキと自分が重なり、何もかもが虚しくなって、こんな関係は全部壊してしまおうとユキに無理やりキスしたことと、一方的に吐き捨てた言葉。

「わかってたし今更だけどさ…オレはユキに、一度も男としてさえ見られてなかったんだよなぁ。しかも相手はリュウだろ? やっぱヘコむわ。オレなんかどう頑張っても勝てねぇじゃん。」

「さっすがリュウ、天然タラシ健在だな。」

トモキはおかしそうに笑ってタバコに火をつけた。

アキラもタバコを口にくわえると、トモキが火をつけた。

「いい男過ぎるっての…。ホント天然だよな、あいつ。自覚がねぇのが更にタチ悪いんだよ。」

「アキの気持ちはわかるぞ。オレなんか何度付き合ってた女の子の心を持ってかれたか。オレ、彼女をリュウに紹介するたびにふられんの。リュウはその子たちとは付き合わなかったみたいだけどな。」

中学時代、確かにトモキは誰と付き合っても長続きしなかった。

中学卒業後トモキは高校に通っていたが、時々彼女を連れてきても、やはりしばらくすると別れたと言っていたように思う。

「紹介するから持ってかれるんだって思ってさ。オレ、アユちゃんだけはリュウに紹介しなかったんだ。」

「そういや…トモに彼女ができたとは聞いたけど、オレもユキも会ったことはなかったな。」

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