Another moonlight
トモキはウイスキーを飲みながら少し考える。

「ユキはなんで高校辞めたんだ?ヤンキーでも頭は良かったんだろ?」

「さぁ…聞いたことねぇ。1年の途中で急に辞めたんだよな。ただ単純に学校つまんねぇのかなって思ってた。」

「アキにもユキについて知らないことがあるんだな。」

自分が思うより、アキラはいつもユキと一緒にいてユキのことならなんでも知っていると、人から思われていたらしい。

そう思うと、アキラは急に照れ臭くなる。

「当たり前だ。あいつが自分の口から言わねぇことは、なんも知らねぇよ。」

「それでも好きなんだ。」

あまりにストレートなトモキの一言に、アキラは照れ臭さを隠すように勢いよくビールを煽った。

「……もう好きじゃねぇ。」

「ふーん?そっか、アキは長い初恋に終止符を打ったわけだな。」

トモキはアキラのビールのおかわりをマナブに頼んだ。

「終止符?」

「ピリオドのこと。文章の終わりに打つ点だよ。中学で習っただろ?」

「覚えてねぇ。サボってばっかだったし。」

中学時代、しょっちゅう授業をサボっては、たまり場で仲間たちと他愛ない話をして笑っていた。

将来のことなど何も考えず、今が楽しければそれで良かった。

「長い間続けてきたことを終わらせることをな、終止符を打つとか、ピリオドを打つって言うんだ。アキはユキへの気持ちとか、今までの関係とか、完全に終わらせたんだろ?」

「…終わったな。」

「終わったじゃなくて、終わらせたのかって聞いたんだよ。」

“終わった”と“終わらせた”はどう違うのか?

アキラにはトモキの言いたいことが、いまいちよくわからない。

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