桜吹雪が舞う頃に
微妙な空気の中、授業は終わった。話を聞くために二人で帰る。そういや昨日も俺、加賀野を家に送ったな。
加賀野って何者なんだ?
「なあ、俺の事知ってたんだよな?」
「うん。知ってたよ。昨日会う前からね」
「じゃあ、昨日のは……」
加賀野は一歩前に出てこちらを向く。
「ねえ。怒らないでね! あと、秘密にしてくれる?」
抽象的な話すぎてわからないが、約束しないと話さないだろう。
「ああ。わかった」
「私の父の友達に九条弁護士がいる」
「おい!」
加賀野は人差し指を唇の前に置く。母親かよ。気づいてないと思ってたのに。バレてたか。
「はい。正解! 九条君のお母さんの九条弁護士さん、とっても酔っ払って、私の家でね、涙ながらに最近の息子の様子について話てたの。で、しばらく九条君の様子をみて、ちょっと危なかったから探偵さんに頼んでたの」
「あ! 探偵!」
う、繋がって行く。
「で、私が九条君の学校に転入したの。いやでも、同じクラスは偶然だよ。いくらなんでも。で、クラスで話をしたりクラスの様子を見ていたの。で、探偵社に報告を聞きに行った時に、偶然九条君が憂さ晴らしにケンカしてる地域で被害にあってる女の子に会ったの。昨日九条君の憂さ晴らし加減見てたら、その加害者達に絡まれてる九条君を見て、ボコボコにされた奴が助けを呼んでるって聞いて、あそこに行ったの」
「偶然を強調するけどほぼ計画だろ?」
「まあまあ。って事で。クラスの事どうするかなって思ってたら、彼女の態度が腹立ってね」
「彼女って内山?」
確かにあれがなければ、顔を見てもクラスにああいいたかな程度だった。印象に全く残ってなかった。
「自分の気持ち伝えるのに人の気持ち踏み潰して、ましてや好意を寄せてる人の気持ち踏み潰すなんて!」
加賀野のあの不敵な笑は演技だったんだな。加賀野は本当は怒っていたんだ。今は怒りを露わにしている。
「まあな」
「ストレス発散に街に出てはケンカしてるみたいだけど、危ないし」
「お前も危ないだろ?」
確かに強かったけど女は女だ。腕力ではかなわないだろう。昨日も俺といたから何とかなったんだ。
「ああ、あれは……探偵さん二人つけてもらってたし」
「ああ! じゃあ、なんで俺に送らせたんだよ!」
探偵二人もいるなら大丈夫じゃないか。あ、そういや電話でもそのままつけるとかいってたな。
「そりゃー。九条君があいつらにつけられないようにだよ」
お、俺の為かよ。
「お前策士だな」
「え? そう」
なんで嬉しそうなんだよ。ん?
「なあ、なんでそこまでやんの? 転校までするなんて?」
「うーん。出来れば言いたくなかったんだけどね」
なんかすごい歯切れが悪くなったな。加賀野の顔が急に曇った。
「あ、いや、言いたくないならいいよ。うん。もうわかったし」
いや、あんまりわかってないけど、なんか聞きにくい。
「ううん。前の学校でね、うん。その、襲われて」
「え!」
うわ、聞いちゃいけないこと聞いた? 聞くんじゃなかった。
「あ、未遂だよ! 未遂」
「あ、そうだよなお前強いし」
「うん。自力でね。うん。頑張った」
「ああ、うん」
ん? ならなんで転校?
「でもね。怖くなったの。学校がね。相手の奴らすぐに退学になって、いなくなったんだけど、だんだん学校に行けなくなったの」
奴ら……一人じゃなかったんだ。
「で、転校?」
「んー。夏休みまたいでね。行けるかと思ってたんだけど無理で、そこに九条弁護士がね、話してるの聞いてね」
「あ、あのさ……」
そう気になっていたんだ。母親はそんなに気をすぐに許すタイプじゃないのになんで酔っ払って加賀野の家にいるんだ。
「ん?」
「なんで俺の母親……」
う、言いにくい。
「ああ、佐々木弁護士さん!」
「は? ああ、あああ!」
佐々木さんと母は仲がいい。佐々木さんの息子の直人は俺より一つ上で俺も直人とも親しくなるぐらいだ。よく母親同士二人で飲みに行ってるみたいだった。どちらも独身な上に息子も大きいから気ままなんだろうと。
「父がね、佐々木さんと気があったみたいで、で、九条さんもって」
「そう」
「うん」
加賀野の父親は独身なのか? これって俺ら微妙な関係になるのか。
「あ、直人! 知ってるんだよね?」
「え! あ、ああ。うん。佐々木直人だろ?」
直人とは母親同士が仲がいいから自然と会うようになった。気さくで優しい兄貴みたいな存在だ。
「そう。直人も心配してたよ。九条君のこと」
「あいつも知ってたんだな」
最近も会ったけど知らんふりしてた。くそ、はめられた気分。あ、いや宮本、内山にすでにはめられてたんだけどな。
ん? 直人って呼び捨て? え? どういう関係なんだ?
「直人って、親しげだな」
「ああ、よく家に来てくれるの。中学からの付き合いだし。事件あってからは特にね」
中学からって長い! なんだよ、直人! 俺にはなんにもなしかよ。
「あ、だから、言われるかも」
「ん? 何を?」
直人からか?
「朝、心配だって直人が学校まで送ってくれてたんだ。久しぶりの学校だったからね。なんで、昼に言った付き合ってるって話。直人と登校するの見られてるから何か言われるかも」
おい、直人もう大学生だろ? なんだよ二人の関係……ってか、付き合ってるって話にまとめられてる? 実は本気だったんだけど。
まあ、今は無理かいろいろあったんだしな。彼氏いるとなれば手も出されないから安心か。
加賀野って何者なんだ?
「なあ、俺の事知ってたんだよな?」
「うん。知ってたよ。昨日会う前からね」
「じゃあ、昨日のは……」
加賀野は一歩前に出てこちらを向く。
「ねえ。怒らないでね! あと、秘密にしてくれる?」
抽象的な話すぎてわからないが、約束しないと話さないだろう。
「ああ。わかった」
「私の父の友達に九条弁護士がいる」
「おい!」
加賀野は人差し指を唇の前に置く。母親かよ。気づいてないと思ってたのに。バレてたか。
「はい。正解! 九条君のお母さんの九条弁護士さん、とっても酔っ払って、私の家でね、涙ながらに最近の息子の様子について話てたの。で、しばらく九条君の様子をみて、ちょっと危なかったから探偵さんに頼んでたの」
「あ! 探偵!」
う、繋がって行く。
「で、私が九条君の学校に転入したの。いやでも、同じクラスは偶然だよ。いくらなんでも。で、クラスで話をしたりクラスの様子を見ていたの。で、探偵社に報告を聞きに行った時に、偶然九条君が憂さ晴らしにケンカしてる地域で被害にあってる女の子に会ったの。昨日九条君の憂さ晴らし加減見てたら、その加害者達に絡まれてる九条君を見て、ボコボコにされた奴が助けを呼んでるって聞いて、あそこに行ったの」
「偶然を強調するけどほぼ計画だろ?」
「まあまあ。って事で。クラスの事どうするかなって思ってたら、彼女の態度が腹立ってね」
「彼女って内山?」
確かにあれがなければ、顔を見てもクラスにああいいたかな程度だった。印象に全く残ってなかった。
「自分の気持ち伝えるのに人の気持ち踏み潰して、ましてや好意を寄せてる人の気持ち踏み潰すなんて!」
加賀野のあの不敵な笑は演技だったんだな。加賀野は本当は怒っていたんだ。今は怒りを露わにしている。
「まあな」
「ストレス発散に街に出てはケンカしてるみたいだけど、危ないし」
「お前も危ないだろ?」
確かに強かったけど女は女だ。腕力ではかなわないだろう。昨日も俺といたから何とかなったんだ。
「ああ、あれは……探偵さん二人つけてもらってたし」
「ああ! じゃあ、なんで俺に送らせたんだよ!」
探偵二人もいるなら大丈夫じゃないか。あ、そういや電話でもそのままつけるとかいってたな。
「そりゃー。九条君があいつらにつけられないようにだよ」
お、俺の為かよ。
「お前策士だな」
「え? そう」
なんで嬉しそうなんだよ。ん?
「なあ、なんでそこまでやんの? 転校までするなんて?」
「うーん。出来れば言いたくなかったんだけどね」
なんかすごい歯切れが悪くなったな。加賀野の顔が急に曇った。
「あ、いや、言いたくないならいいよ。うん。もうわかったし」
いや、あんまりわかってないけど、なんか聞きにくい。
「ううん。前の学校でね、うん。その、襲われて」
「え!」
うわ、聞いちゃいけないこと聞いた? 聞くんじゃなかった。
「あ、未遂だよ! 未遂」
「あ、そうだよなお前強いし」
「うん。自力でね。うん。頑張った」
「ああ、うん」
ん? ならなんで転校?
「でもね。怖くなったの。学校がね。相手の奴らすぐに退学になって、いなくなったんだけど、だんだん学校に行けなくなったの」
奴ら……一人じゃなかったんだ。
「で、転校?」
「んー。夏休みまたいでね。行けるかと思ってたんだけど無理で、そこに九条弁護士がね、話してるの聞いてね」
「あ、あのさ……」
そう気になっていたんだ。母親はそんなに気をすぐに許すタイプじゃないのになんで酔っ払って加賀野の家にいるんだ。
「ん?」
「なんで俺の母親……」
う、言いにくい。
「ああ、佐々木弁護士さん!」
「は? ああ、あああ!」
佐々木さんと母は仲がいい。佐々木さんの息子の直人は俺より一つ上で俺も直人とも親しくなるぐらいだ。よく母親同士二人で飲みに行ってるみたいだった。どちらも独身な上に息子も大きいから気ままなんだろうと。
「父がね、佐々木さんと気があったみたいで、で、九条さんもって」
「そう」
「うん」
加賀野の父親は独身なのか? これって俺ら微妙な関係になるのか。
「あ、直人! 知ってるんだよね?」
「え! あ、ああ。うん。佐々木直人だろ?」
直人とは母親同士が仲がいいから自然と会うようになった。気さくで優しい兄貴みたいな存在だ。
「そう。直人も心配してたよ。九条君のこと」
「あいつも知ってたんだな」
最近も会ったけど知らんふりしてた。くそ、はめられた気分。あ、いや宮本、内山にすでにはめられてたんだけどな。
ん? 直人って呼び捨て? え? どういう関係なんだ?
「直人って、親しげだな」
「ああ、よく家に来てくれるの。中学からの付き合いだし。事件あってからは特にね」
中学からって長い! なんだよ、直人! 俺にはなんにもなしかよ。
「あ、だから、言われるかも」
「ん? 何を?」
直人からか?
「朝、心配だって直人が学校まで送ってくれてたんだ。久しぶりの学校だったからね。なんで、昼に言った付き合ってるって話。直人と登校するの見られてるから何か言われるかも」
おい、直人もう大学生だろ? なんだよ二人の関係……ってか、付き合ってるって話にまとめられてる? 実は本気だったんだけど。
まあ、今は無理かいろいろあったんだしな。彼氏いるとなれば手も出されないから安心か。