桜吹雪が舞う頃に
***
母からのメールで慌てて若菜の家に向かう。
玄関に出てきた若菜は少し元気がないが、思っていたほどではなかった。
「あれ? 直人? 大学は?」
「そんな事より若菜大丈夫なのか?」
「うーん。まあ……いや、大丈夫じゃないから紫苑さんに来てもらったんだけどね」
「ああ、そうだな。ん? 母さんは?」
リビングに入って母がいないのに気づいて言う。
「ああ、学校から電話かかってきて向こうの保護者に連絡取れたんでって。で、紫苑さんにお願いしたの」
「そうか。うん。それがいいよ」
若菜は十分傷ついたのに、さらに追い打ちかけるなんて。それが女子だとは驚いた。
インターフォンが鳴る。若菜が出る。
「あ、九条君だ」
「え! 岳?」
ああ、そうだった。岳から電話で言われたんだ、若菜の送り迎えは自分がすると。そもそも若菜が岳の学校を選んだのも岳に理由があったからだ。若菜はどうやら岳の問題をあっという間に片付けたようだ。あんなに明るい岳は久しぶりだった。
が、なんなんだよこの急接近は!
若菜は玄関に急いで行く。若菜と岳にいったい何があったんだよ。岳は相当荒れてたみたいだったのに。
若菜は一人でリビングに来た。
「あれ? 岳は?」
「心配して見にきてくれただけだよ」
「そうなのか。ふーん。若菜やっとか……そうかそうか」
「何よ! 直人まで。紫苑さんにも言われたけど、何年前だと思ってるのよ!」
そうだよ若菜何年想ってたんだよ。やっとその想いを振り切れたんだな?
「あれは若菜が……」
「もういちいち思い出さなくていいの! あいつのことはもう、いいんだから」
「岳には?」
「なんで言うのよ! あ、直人言わないでよ!」
ふーん。若菜本気っぽいな。岳かあ。そういやあいつに似てるような。
「言わない。言わない。って気にしすぎじゃないか? やっぱまだあいつのこと?」
ムキなのはどっちでだ?
「もう、終わった事。って言うかはじまってもない。そんな話いいでしょ、もう」
やっぱり若菜あいつの気持ち知らないんだな。はじまってもないか。あいつ知ったらショック受けるな。まあ、あいつが悪いんだけど。不器用な奴だったからな。
と、ここで母からの電話だ。
「はい。ああ、もう来てる。うん? え? マジで? わかった。そう伝える。ああ」
母は電話を切った。
「どうなったの?」
「向こうが弁護士が来たんでパニクって娘と大揉めになって、挙句には校長にまで噛み付いて……で、自主退学するって本人が言い出したって。だけど学校は一応停学処分にするって」
「そう」
「若菜、大丈夫か?」
顔色悪い若菜に聞く。
「ああ、うん。ホッとしたのと、やり過ぎたかと、心配になって」
「だけど、やり過ぎたのは向こうだし、挙句退学って言い出したのも向こうなんだから」
「うん。そうだね」
まあ、これだけの話になれば若菜に噛み付いてくる奴はいないだろう。一安心と言えばそうだが孤立するかもしれない。
「ふふ」
「なんだよ。ううん。直人ってはじめからお兄ちゃんみたいだね。一つ上なだけなのに」
「お前なあ、最初っからあれじゃあ誰でもそうなるぞ」
「ああ、まあね」
「あ、母さんが今夜は一緒にご飯しようかだって」
若菜は嬉しそうだ。やっぱり一人でいる時間が長いよな。
母からのメールで慌てて若菜の家に向かう。
玄関に出てきた若菜は少し元気がないが、思っていたほどではなかった。
「あれ? 直人? 大学は?」
「そんな事より若菜大丈夫なのか?」
「うーん。まあ……いや、大丈夫じゃないから紫苑さんに来てもらったんだけどね」
「ああ、そうだな。ん? 母さんは?」
リビングに入って母がいないのに気づいて言う。
「ああ、学校から電話かかってきて向こうの保護者に連絡取れたんでって。で、紫苑さんにお願いしたの」
「そうか。うん。それがいいよ」
若菜は十分傷ついたのに、さらに追い打ちかけるなんて。それが女子だとは驚いた。
インターフォンが鳴る。若菜が出る。
「あ、九条君だ」
「え! 岳?」
ああ、そうだった。岳から電話で言われたんだ、若菜の送り迎えは自分がすると。そもそも若菜が岳の学校を選んだのも岳に理由があったからだ。若菜はどうやら岳の問題をあっという間に片付けたようだ。あんなに明るい岳は久しぶりだった。
が、なんなんだよこの急接近は!
若菜は玄関に急いで行く。若菜と岳にいったい何があったんだよ。岳は相当荒れてたみたいだったのに。
若菜は一人でリビングに来た。
「あれ? 岳は?」
「心配して見にきてくれただけだよ」
「そうなのか。ふーん。若菜やっとか……そうかそうか」
「何よ! 直人まで。紫苑さんにも言われたけど、何年前だと思ってるのよ!」
そうだよ若菜何年想ってたんだよ。やっとその想いを振り切れたんだな?
「あれは若菜が……」
「もういちいち思い出さなくていいの! あいつのことはもう、いいんだから」
「岳には?」
「なんで言うのよ! あ、直人言わないでよ!」
ふーん。若菜本気っぽいな。岳かあ。そういやあいつに似てるような。
「言わない。言わない。って気にしすぎじゃないか? やっぱまだあいつのこと?」
ムキなのはどっちでだ?
「もう、終わった事。って言うかはじまってもない。そんな話いいでしょ、もう」
やっぱり若菜あいつの気持ち知らないんだな。はじまってもないか。あいつ知ったらショック受けるな。まあ、あいつが悪いんだけど。不器用な奴だったからな。
と、ここで母からの電話だ。
「はい。ああ、もう来てる。うん? え? マジで? わかった。そう伝える。ああ」
母は電話を切った。
「どうなったの?」
「向こうが弁護士が来たんでパニクって娘と大揉めになって、挙句には校長にまで噛み付いて……で、自主退学するって本人が言い出したって。だけど学校は一応停学処分にするって」
「そう」
「若菜、大丈夫か?」
顔色悪い若菜に聞く。
「ああ、うん。ホッとしたのと、やり過ぎたかと、心配になって」
「だけど、やり過ぎたのは向こうだし、挙句退学って言い出したのも向こうなんだから」
「うん。そうだね」
まあ、これだけの話になれば若菜に噛み付いてくる奴はいないだろう。一安心と言えばそうだが孤立するかもしれない。
「ふふ」
「なんだよ。ううん。直人ってはじめからお兄ちゃんみたいだね。一つ上なだけなのに」
「お前なあ、最初っからあれじゃあ誰でもそうなるぞ」
「ああ、まあね」
「あ、母さんが今夜は一緒にご飯しようかだって」
若菜は嬉しそうだ。やっぱり一人でいる時間が長いよな。