【Berry's Cafe版】やっぱり君にはかなわない〜花と光と奏でSS
『違うもん』

("もん"って…)

「違うの?」

『違うもん。緊張してるんだもん』

(何この可愛い生き物……)

『二人きりだし……』

(今さら?)

『………歌を聴いて貰うことにも緊張してるんだもん』

(歌?その"聴く"だったの?)



上目使いにされた瞳を揺らして、それを俺に向けてくる姿が可愛い。



「何聴かせてくれんの?」



俺は紫音の両手をそっと包み込み、その瞳を覗き込んだ。



『来て下さい』



そう言った紫音は俺の手を引き、別の場所へと移動する。


そしてリビングにあるドアの内の一つを開いて、その中へと俺を誘導した。


その部屋は、紫音の部屋と、中にあるドアでつながっていて、俺がここへ来た時に何度か入ったことのある空間。


防音設備の整った、グランドピアノが置かれている部屋だった。


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